新国立劇場『山の巨人たち』

新国立劇場『山の巨人たち』 in 新国立劇場中劇場(10/25)

作   ルイジ・ピランデルロ
翻訳 田之倉稔
演出 ジョルジュ・ラヴォータン

伯爵(手塚とおるさん)と看板女優であり伯爵夫人であるイルセ(麻実れいさん)ら
率いる俳優達一行が興行の失敗による失敗で破産し打ちひしがれながら
山間の魔術師コトローネ(平幹二朗さん)と不思議な仲間たちの住む屋敷に到着します。
彼らは、素晴らしい芝居を2年間上演し続けましたが、観客に受ける事がなく
伯爵は破産をしてしまったそうです。
その芝居は、イルセに恋した詩人が彼女の為に書いた
『取り替えられた息子の物語』という戯曲でしたが、書き上げた後に
自分の思いが叶わないことが解ると自殺してしまいました。
この出来事に俳優達はイルセの非道さを非難しながらも
彼女の女優としての才能に惹かれここまで付いて来たのでした。
イルセは、すでに狂気と正気の間を行き来しています。
コトローネは、伯爵一行に一夜の宿を提供し、伯爵達一行は不思議な体験をします。
翌日、コトローネは、自分たちも手を貸すので
「山の巨人たち」と呼ばれる人たちの一組が結婚するので、その式の余興で
『取り替えられた息子の物語』を上演するのはどうか?と提案します。

この作品は、ピランデルロさんが亡くなった為に3幕の途中で筆が終わっているそうです。
その結末は息子・ステファーノさんが父から聞かされた言葉として伝えられています。
上演されるたびに、各演出家によって解釈の違う結末が作られたそうです。
途中で絶筆されたので、『山の巨人たち』は舞台には登場しませんが
「『山の巨人たち』と呼ばれる1組(ウーマ&ロパルド)のカップルの婚姻が行なわれるので
その余興として、芝居を上演しては如何?」というコトローネの申し出があるので
きっと実在するんでしょうね。いや、実在して欲しいなと。

本当に不思議なお話です。
突然に歌い出すかと思うと、踊ったり、人形が動き出したり、アクロバットもあるし
真逆な真面目な伯爵チームVSコトローネの愉快な仲間チームが
全く馴染まない可笑しさが何ともいえません。
私的には、コトローネの仲間であるズグリーチャ(田根楽子さん)の百日天使の話は
大好きで、少女のように語るズグリーチャがとても可愛くって♪可愛くって
とはいえ、コトローネ自身その力によって
「良心が受け入れることを拒む真実を引き出した」・・。知りたくなかった隣人の姿・・
知らなければ普通に過せただろう、他人との共存のベールを剥ぎ取ってしまった
ために村から追い出された身だし。
ズグリーチャにしても、自分はこの世にいないと思っているし、
普通に生きていくことが困難な人たちが肩を寄せ合ってこの館で生きてるってことは、
やはり観客に受け入れてもらえない芝居を上演し続ける伯爵一行と
同じ香りのコロニーを作っている気がします。
ま、でもお互い相容れないグループですけど(笑)

コトローネの館での一夜は、ホントに不思議な出来事が、万華鏡のように
色を変え、品を変えて現れます。果たして、これはいったいと???と
思いながらも、それが実は夢の出来事で
それも、みんながみんな同じ夢の中に生きてるって・・もう不思議すぎて妖しい(笑)
だって夢の中では、なんでもありじゃないですかぁ、それもみんないるんですもん。
だから舞台上もなんでもあり状態・・もう、いちいち考える必要がないのも
頷けます。ただ目の前の華やかな世界と音楽に心を躍らせるだけ・・
あ~でも実際、こんな夢の体験とが出来たら(絶対無理ですか)これって楽しいですよね。

コトローネが語る言葉には、哲学的な難しい言葉が多いのですが
作家のイメージによる登場人物たちの霊魂が人形の体に乗り移るとか
霊魂の力とか・・インチキくさい香りがしながらも、妖しく面白いんです。
「太陽の光ではものが見えない。夜は夢の世界に属しています
ただ曙だけが、人間にはっきりものを見せてくれる・・」
「夜明けは未来に、日暮れは過去に向っているです」とか
私の好きな布袋寅秦さんの「LONERY★WILD」という歌の歌詞に
「生きぬいてやれ昨日と明日の間」という詩があって、なんかぐっとくるんですよね。
夜明けの一瞬の神々しい光が、橋のたもとから現れて、幻も去っていきます。
そして夢はあくまでも夢で、夢が醒めたら現実の世界が待っています。
でも夢が醒める一瞬・・夜と朝の狭間で時間が止まればいいのに・・・って
そう願う時・・ありませんか?いやぁなんか語っちゃいましたf(^_^;)

このお話の現実の部分は、恐ろしい残酷な終幕を迎えます。
コトローネたちも協力して『山の巨人たち』の配下の民衆達の前で
『取り替えられた息子の物語』を上演しようとしますが、失敗してしまいます。
それに怒ったイルセに対し逆に民衆の怒りを買い、イルセは殺されてしまいます。
イルセを助け出そうとしたスピッツィ(植本潤さん)、ディアマンテ(田中美里さん)も
八つ裂きにされてしまうそうです。
人形のイルセが舞台に立ち、麻実れいさんの囁く声が響きます。
救いなく舞台の幕がおります。
大人のためのおとぎ話は残酷です。
もし、ラヴォータンさんでなく鵜山仁さん♪版の『山の巨人たち』だったら
残酷だけど・・・何か明日への救いを残してくれたのでしょうか?!

冒頭、館に向ってやってくる伯爵一行をコトローネがイメージします。
荷車に横たわる裸の女性・・・
実際は、グレーのコートに身を包み颯爽と現れるイルセでしたが・・
そのイメージは、最後にイルセの死体を荷車に乗せて去っていく伯爵一行の末路を
最初からコトローネは知っていたから?!うっ、怖いっ

最後まで現れない『山の巨人たち』・・・。イメージするとしたら
権力かなぁ・・抗うことが出来ない否定的な絶対の支配者とか・・まっ現れたら
コメディになっちゃいそうですね(笑)
決して、日本人登山家がネパールで発見した、足あとの持ち主??
雪男イエティをイメージしたりはしません・・・・ちょっとしましたが(笑)

夢の中で歌って踊って、クローモ(大鷹明良さん)のダンスがすっごオモロです。
あの音楽「♪ちゃらららららら、らら、ちゃっちゃちゃら・・♪」
聞いたことがあるのですが、題名がわからないのです(><)耳に残ります。
不思議な体験をされたい方!ぜひおススメします。
終演後も余韻に浸っていたい方!ぜひおススメします。
わたしは・・も一度体験してきます。
あーだこうだと、ひっちゃかめっちゃかと余韻に浸れるお芝居・・好きなのです(*^_^*)
この感想もひちゃかめっちゃかでしたが・・・f(^_^;)



10/23(木)~11/9(日)まで in 新国立劇場中劇場
by berurinrin | 2008-10-26 01:10 | 観劇感想